200709
- スポンサーサイト(10/16)
- お題2のオマケです。(09/17)
- へろへろ(09/17)
- 生存報告(09/04)
- 行って来ます(09/01)
お題2のオマケです。
ラストをもう少し書き足すか、書き足さないかでだらだらと放置してました。結局、あんまり長くしてもテンポが悪いのでさくっと切ってしまいましたが。(苦笑)
お題2作目のオマケです。記事を開いてお読みください。
[お題2のオマケです。] Read More↓
お題2作目のオマケです。記事を開いてお読みください。
オマケ(お題2の付け足し)
「うわぁ……このお池、湯気が出てる。これ、お湯なの? それに、お水が白いよ?」
「馬鹿もん、これは池ではなくて、温泉じゃ!」
「おんせん?」
「温泉も知らんのか?」
「うん」
あっさりと認めて頷く少女に、邪見はがっくりと肩を落とした。
そんな彼とは対照的に、少女の方は好奇心に眼を輝かせて岩に囲まれた天然の露天風呂を覗き込んでいる。その様子を見て、邪見は更に疲れたようにため息を一つついた。
異母弟との戦いのさなかにはぐれてしまった主を、ここ数日間探し回って、漸く探し当てたのがつい先刻の事である。(ある程度予想はしていたが)満身創痍の主を見て、大いに焦った邪見であったが、いつもと変わらずに平然とした態度であったのにほっと胸を撫で下ろしたのであった。それが例え痩せ我慢であったとしても、少なくとも平静を装うだけの余裕があると言う事だからだ。
しかし、その後に続いた一連の出来事は、長年殺生丸に仕えてきた邪見をして、主の正気を疑いたくなるような事の連続であった。
邪見はため息をつきながら、恐る恐る手を伸ばして温泉に指先を浸している少女を見やった。
――殺生丸さまも何を考えて、こんな小娘を連れてこられたのか……
殺生丸が天生牙の癒しの力をもってして人間の子供を生き返らせた事には、それこそ我が目を疑うほどに驚いたが、すぐに少女を置いて立ち去ろうとした主の姿を見て、一安心したのも束の間の事であった。
一体何があったのかは分からないが、いきなり踵を返したかと思うと、来た道を真っ直ぐに引き返したのだ。
ちなみに邪見が殺生丸に追いつくのが遅れたのは、ちょうどその時に主の騎竜である双頭竜の阿吽がやってきたからだった。主に似たのか気紛れな所のあるこの竜を殺生丸も好きにさせていたのだが(彼自身が竜に勝るとも劣らない飛行能力を持っている事もあるし、呼べばすぐに来るという事もあった)、この度の主の異常を彼(彼ら)も察したらしく、呼ばれる前にやって来たのだ。
久しぶりに合流した双頭竜の手綱を取って主の方へ向かったら、主の傍らには薄汚れた人間の小娘の姿があった。その光景に眼を丸くする邪見には構わずに、一緒にやってきた双頭竜の姿を認めると、ちょうどいいとばかりに小娘の身体を無造作に掬い上げて、その鞍に乗せたのだ。
あまりの事に何も言えずに口をぱくぱくさせている邪見と、やはりぎょっとしたように二つの首をそれぞれ主といきなり背に乗せられた少女に向け、困惑している双頭竜には構わずに、いつもと全く変わらない口調で「行くぞ」とだけ告げて、彼らの主はすたすたと歩き始めたのであった。
いきなり荷物よろしく鞍に乗せられた少女も驚いたらしく、慌てて鞍壺の辺りをしっかりと掴んでずり落ちないように身体を固定する。
それを確認すると、阿吽もまた――かなり混乱していたのは間違いないだろうが――主の後を追い、邪見もまたそれに続いたのであった。
そこまで思い出して、邪見はまたもや深いため息をついた。
「……ま。――さま……」
大体、この少女にしても、何を好き好んで妖怪の後を追うようなことをしているのか。
そんな事を考えていると、ため息が尽きない邪見であった。
「……――邪見さま、ってばあっ!」
「うぉ!」
いきなり耳元で大きい声を出され、邪見が飛び上がると少女がその様子を不思議そうに見下ろしている。
「な、なんじゃ、いきなり大声を出して」
「いきなりじゃないもん。りん、何度も呼んだんだよ」
そう言うと、少女――りんは、温泉と邪見の顔を交互に見つめて質問してきた。
「ねえ、ここに何しに来たの?」
「……何をしにって……身体を洗うために決まっとろうが」
温泉に来て、他に何をすると言うのだ。
そう言う邪見の態度に、りんは不思議そうに小首を傾げた。
「ここのお湯で身体を洗うの?」
「そうじゃ」
「……?」
それでもりんはまだ腑に落ちない風であった。
そもそもこの時代、身体を洗うために湯を沸かすという習慣は一般的ではなかった。これは何も庶民に限った事ではなく、貴族階級でもそうであったのだ。上流階級で着物に香をたきしめるというのを行うのも、突き詰めて言うと体臭を誤魔化すためのものであった。
温泉による湯治そのものはかなり古くから行われていたが、そういった知識と言うのは一部の上流階級(あるいは地元の者)に限られており、普通の庶民が知る由もないことだった。
温泉の効能も、お湯で身体を洗うという事も知らないりんが戸惑っているのには構わずに、邪見は懐から手拭いを取り出してりんに渡した。
「ほれ、垢すりにはこれを使え。いいか、汚れをきちんと落とすまで、出てくるなよ」
「……はあい」
邪見の言っている事が全部理解できた訳ではなかったが、とにかくこの「おんせん」とやらに入って身体を洗えばいいのだろうと思って、おとなしく布を受け取って岩陰の方に行って着物を脱ぎ始める。
その様子を視界の隅で確認しながら、邪見はやれやれとため息をついた。りんが温泉に入っている間に、あのぼろきれ同然の着物を洗って、少しはましにしなければいけないだろう。鼻の利く主の側に、あんな汚れたものを置いておく訳には行くまい。
りんが温泉の中に入ってから、邪見は着物を摘み上げて彼女に声をかけた。
「わしはちょっとここを離れるが、きちんと身体は洗うんじゃぞ」
「はあい」
ぱしゃぱしゃと水が撥ねる音と共に、返事が返ってくる。
手近な小川でざばざばと適当に着物を洗うと、邪見は一度それを広げてみた。元が元だからそれほど綺麗にはならないし、血の染みなどはそう簡単に落ちるものではないが、さっきよりはましだと思って絞りにかかる。
そこで、邪見はふと違和感を感じた。
少女の身体に対して、着物が小さすぎるような気がしたのだ。
再び着物を広げてあらためて見直してみると、袖や裾に継ぎが当たっている様子がない。繕った痕跡はそこかしこにあるが、それも拙(つたな)いもので、まるで子供の手によるようなものであった。
「……?」
いかに貧しくとも、普通は子供の成長に合わせて、着物を仕立て直したり、(貧しくてそれすらも出来ない場合であっても)袖や裾に布を継いだりするものだが、この着物にはそういった形跡が全くないのだ。もし仮に着物に布を継ぐ事すらも出来なかったのだとしても、綻びや何かを繕うのは親がする筈であるが、これはどう見ても大人の手によるものではない。
「……」
あの少女が自分たちの後を着いて来たのは、狼どもによって村人達――身寄りの者――が食い殺されてしまったためだと思っていたのだが、もしかしたらそのずっと前から彼女には身寄りの者などいなかったのではないだろうか。
辛うじて身を寄せていた村が狼どもによって壊滅させられ、天生牙によっていきなりこの世に引き戻された幼子が、命を救ってくれた相手の後を――それが妖怪であっても――思わず追ってしまったのは無理はないかもしれない。
そう考えると、思わず同情にも似た感情がわきあがるが、それを打ち消すようにぶんぶんと首を振る。
妖怪である自分が、人間の子供に同情する必要など無いのだ。
しかし、それなら何故主はあの少女を連れてきたのだろうか――と、改めて着物を絞りながらふと考え込んでしまう邪見であった。
りんは物珍しそうに白濁した湯をぱしゃぱしゃと撥ね上げていた。
昼間はともかく、夜になるとまだ冷え込む事のある時期であるため、(少し熱かったのだが)湯に浸かっているのは気持が良かった。渡された布で腕を擦ってみると、湯で温まって柔らかくなった肌から垢が糸くずのようによれてぽろぽろと落ちる。心なしか、それを落とした後の肌がより滑らかになっているような気がして、りんは身体のあちこちを布で擦ってみた。その度に垢がぽろぽろと落ちるのが面白くて、強く擦っていると、かえってひりひりしてきたので、適当な所で止める。
「……このくらい、落としたらいいよね」
ぽつりとそう呟いて、ふと気がついたように自分の喉に手をやってみる。
指先に触れる肌の感触は滑らかで、傷一つない。
身体のあちこちを改めて見直してみるが、元々あった古い傷跡などはともかくとして、直前まで負っていた打ち身や傷の痕跡は全く無かった。先程転んで打ち付けた膝や手のひらは少しひりひりとしたが、それほど気にはならなかった。
腕を伸ばしてみるが、青痣や打ち身の痕はどこにも見当たらない。
「……りん、死んだはずなんだよね……」
不意に――熱い湯に浸かっているにもかかわらず――冷たいものが背筋を伝いおりた。りんはぶるりと身体を震わせると、身体を丸めて顎まで湯に浸かりなおした。
視界いっぱいに広がった狼たちの真っ赤な口と鋭い牙。それがりんの覚えている最後の光景になるはずだったのだ。
何故自分が助かったのかという事は、今のりんにはまだ良く解ってはいなかったが、あの白銀の妖怪が関わっていることだけは漠然と察していた。
そういえば、邪見が何やら言っていたような覚えもある。
後で(殺生丸には訊いても無駄だろうから)邪見に訊いてみようと思いながら、りんは濡らした布で顔を拭うと、そろそろ上がろうと立ち上がりかけた。
だが――
(……あれ?)
頭の芯がぐらぐらするような奇妙な感覚がする。目の前が――湯気のせいだけでなく――真っ白になっていった。
温泉の中から聞こえてきた派手な水音に、阿吽は片方の首を上げた。
今、温泉の中には人間の子供が入っているはずである。
もう片方の首を擡げて邪見が向かった方を見やるが、まだ帰ってくる様子は無い。ふらりと別の方向へ行った主がこちらに来る気配もまだないことを確認すると、双頭竜はようやく立ち上がって温泉のほうに近づいていった。
邪見同様、彼らもまた主の行動に首を傾げていたのであるが、(まず間違いなく雑用の悉くを押し付けられるであろう)邪見とは違って、彼らはある意味呑気に構えていた。
殺生丸が何を考えて人間の子供などを連れてきたのかは分からないが、主がそうしたいのであれば彼らは黙って従うだけだった。――どの道、誰が何と言おうが、殺生丸は己のしたいようにしかしないのだから。
ひょい、と首を伸ばして天然の岩風呂を覗き込むと、阿吽は少し驚いたように四つの眼を瞬かせた。
人間の子供が、ぐったりとした様子で温泉の中に浮かんでいる。
阿吽は慌てて身を乗り出すと、二つの首を伸ばして子供の両腕を傷をつけないようにそっと咥えて湯の中から引き上げた。
柔らかな草の上に子供の身体を下ろすと、子供は小さく何度か咳き込んで少し水を吐き出した。
小さな痩せこけた身体が茹で上がったように真っ赤になっている。どうやら湯あたりしたらしい。
そこまでは分かるのだが、これからどうしたものだろうかと、阿吽は双の首を傾げた。
今は湯あたりで火照っていても、このままにしておいたら急激に体温が失われてしまうことくらいは彼らにも分かる。何らかの方法でそれを防がないと、今度はそのせいで身体が弱る事は間違いなかった。
しかし、自分たちの身体を覆うのは固く冷たい鱗であり、主のようなふかふかした毛皮ではないのだ。
主を呼びに行った方がいいだろうかと首を傾げていると、当の本人がやってくる気配がした。
少女の気配の変化を察して、殺生丸は下僕と騎竜を残しておいた場所に足を向けた。
湯あたりでもしたらしく、真っ赤になってぐったりしている少女の傍らに、騎竜が困惑したように佇んでいる。
下僕の姿はなかった。少女の着物やらが無いところから察するに、どうやら着物を洗いにでも行ったらしい。
片方の頭でぐったりとしている少女を見ながら、阿吽がもう片方の頭を上げて殺生丸の方を見つめてくる。
殺生丸もあらためて少女を見下ろしてみた。
湯で温められて赤くなった肌にいくつも浮かぶ傷痕に、僅かにその金色の眼が細められる。日常生活の中でつくような傷ではなく、明らかに他者による暴行の痕跡であると判るそれは、少女の小さな身体のあちこちを埋め尽くすように浮かび上がっていた。
「……」
殺生丸は無言のまま少女の傍らに腰を下ろし、己の毛皮の端が少女の身体を覆うようにしてやった。本能的なものなのか、少女が身体を丸めて毛皮の中により深く潜り込もうとしてくるのを意識の端に捉えながら、殺生丸はゆっくりと近づいてくる下僕の匂いを嗅ぎ取っていた。
人頭杖に少女の着物を括りつけ、空いた手に焚きつけにするつもりの粗朶を抱えた邪見が戻ってきた。主の様子を見て元より大きな眼を更に見開いたものの、特には何も言わずに――あるいはただ単に絶句していただけかもしれないが――慌てて焚き火の準備を始める。
「す、すぐに着物を乾かしますので……」
主の毛皮の端から少女の手足がはみ出ているのを見れば、状況は大体予想がついた。
大方、湯あたりででもしたため、体温の低下を防ぐためにやむを得ず毛皮で覆ってやっているのであろう。人間嫌いの――加えて、鼻の利く――主がそこまでするのは不可解極まりないのだが(そんな事をすれば、まず間違いなく人間の臭いが移るのだから)、あえてそこには思考を向けないようにしておく。
集めてきた粗朶に人頭杖で火をつけると、着物を乾かそうと大急ぎで広げるが、その動きが途中で止まった。
「……あ……」
着物の身ごろの部分が何箇所が大きく裂けている。
そういえば、絞った時に何やら妙な手ごたえを感じたような気がしたが……。
「…………」
背後の気配が何だか今まで感じたことがないくらい不穏さを増しているように感じられるのは、果たして自分の気のせいであるのだろうか。振り向いて、それを確認するだけの勇気は邪見にはなかった。
「……あ、あたらしい、物を、調達してまいります、ので……」
完全に裏返った声でそう言いながら、金縛りにでもあったかのように動こうとしない四肢を何とか動かして、この場から逃れようとした邪見であったが、次の瞬間にそれは別の形で叶えられる事となる。
すっかり馴染んだ――悲しいかな――主の強烈な蹴りが見事に脇腹に入って、彼の身体は夜空に綺麗な放物線を描いて飛んで行ったのであった。
……因みに、これが邪見がりん絡みでお星様になる羽目になった、記念すべき(?)第一回目の事となるのだが、この時はまだ誰もそれを知る由もなかったのである。
「……ふん」
下僕を蹴り飛ばした後、殺生丸は面白くも無さそうに小さく鼻を鳴らした。
END
2007.9.17 脱稿
「うわぁ……このお池、湯気が出てる。これ、お湯なの? それに、お水が白いよ?」
「馬鹿もん、これは池ではなくて、温泉じゃ!」
「おんせん?」
「温泉も知らんのか?」
「うん」
あっさりと認めて頷く少女に、邪見はがっくりと肩を落とした。
そんな彼とは対照的に、少女の方は好奇心に眼を輝かせて岩に囲まれた天然の露天風呂を覗き込んでいる。その様子を見て、邪見は更に疲れたようにため息を一つついた。
異母弟との戦いのさなかにはぐれてしまった主を、ここ数日間探し回って、漸く探し当てたのがつい先刻の事である。(ある程度予想はしていたが)満身創痍の主を見て、大いに焦った邪見であったが、いつもと変わらずに平然とした態度であったのにほっと胸を撫で下ろしたのであった。それが例え痩せ我慢であったとしても、少なくとも平静を装うだけの余裕があると言う事だからだ。
しかし、その後に続いた一連の出来事は、長年殺生丸に仕えてきた邪見をして、主の正気を疑いたくなるような事の連続であった。
邪見はため息をつきながら、恐る恐る手を伸ばして温泉に指先を浸している少女を見やった。
――殺生丸さまも何を考えて、こんな小娘を連れてこられたのか……
殺生丸が天生牙の癒しの力をもってして人間の子供を生き返らせた事には、それこそ我が目を疑うほどに驚いたが、すぐに少女を置いて立ち去ろうとした主の姿を見て、一安心したのも束の間の事であった。
一体何があったのかは分からないが、いきなり踵を返したかと思うと、来た道を真っ直ぐに引き返したのだ。
ちなみに邪見が殺生丸に追いつくのが遅れたのは、ちょうどその時に主の騎竜である双頭竜の阿吽がやってきたからだった。主に似たのか気紛れな所のあるこの竜を殺生丸も好きにさせていたのだが(彼自身が竜に勝るとも劣らない飛行能力を持っている事もあるし、呼べばすぐに来るという事もあった)、この度の主の異常を彼(彼ら)も察したらしく、呼ばれる前にやって来たのだ。
久しぶりに合流した双頭竜の手綱を取って主の方へ向かったら、主の傍らには薄汚れた人間の小娘の姿があった。その光景に眼を丸くする邪見には構わずに、一緒にやってきた双頭竜の姿を認めると、ちょうどいいとばかりに小娘の身体を無造作に掬い上げて、その鞍に乗せたのだ。
あまりの事に何も言えずに口をぱくぱくさせている邪見と、やはりぎょっとしたように二つの首をそれぞれ主といきなり背に乗せられた少女に向け、困惑している双頭竜には構わずに、いつもと全く変わらない口調で「行くぞ」とだけ告げて、彼らの主はすたすたと歩き始めたのであった。
いきなり荷物よろしく鞍に乗せられた少女も驚いたらしく、慌てて鞍壺の辺りをしっかりと掴んでずり落ちないように身体を固定する。
それを確認すると、阿吽もまた――かなり混乱していたのは間違いないだろうが――主の後を追い、邪見もまたそれに続いたのであった。
そこまで思い出して、邪見はまたもや深いため息をついた。
「……ま。――さま……」
大体、この少女にしても、何を好き好んで妖怪の後を追うようなことをしているのか。
そんな事を考えていると、ため息が尽きない邪見であった。
「……――邪見さま、ってばあっ!」
「うぉ!」
いきなり耳元で大きい声を出され、邪見が飛び上がると少女がその様子を不思議そうに見下ろしている。
「な、なんじゃ、いきなり大声を出して」
「いきなりじゃないもん。りん、何度も呼んだんだよ」
そう言うと、少女――りんは、温泉と邪見の顔を交互に見つめて質問してきた。
「ねえ、ここに何しに来たの?」
「……何をしにって……身体を洗うために決まっとろうが」
温泉に来て、他に何をすると言うのだ。
そう言う邪見の態度に、りんは不思議そうに小首を傾げた。
「ここのお湯で身体を洗うの?」
「そうじゃ」
「……?」
それでもりんはまだ腑に落ちない風であった。
そもそもこの時代、身体を洗うために湯を沸かすという習慣は一般的ではなかった。これは何も庶民に限った事ではなく、貴族階級でもそうであったのだ。上流階級で着物に香をたきしめるというのを行うのも、突き詰めて言うと体臭を誤魔化すためのものであった。
温泉による湯治そのものはかなり古くから行われていたが、そういった知識と言うのは一部の上流階級(あるいは地元の者)に限られており、普通の庶民が知る由もないことだった。
温泉の効能も、お湯で身体を洗うという事も知らないりんが戸惑っているのには構わずに、邪見は懐から手拭いを取り出してりんに渡した。
「ほれ、垢すりにはこれを使え。いいか、汚れをきちんと落とすまで、出てくるなよ」
「……はあい」
邪見の言っている事が全部理解できた訳ではなかったが、とにかくこの「おんせん」とやらに入って身体を洗えばいいのだろうと思って、おとなしく布を受け取って岩陰の方に行って着物を脱ぎ始める。
その様子を視界の隅で確認しながら、邪見はやれやれとため息をついた。りんが温泉に入っている間に、あのぼろきれ同然の着物を洗って、少しはましにしなければいけないだろう。鼻の利く主の側に、あんな汚れたものを置いておく訳には行くまい。
りんが温泉の中に入ってから、邪見は着物を摘み上げて彼女に声をかけた。
「わしはちょっとここを離れるが、きちんと身体は洗うんじゃぞ」
「はあい」
ぱしゃぱしゃと水が撥ねる音と共に、返事が返ってくる。
手近な小川でざばざばと適当に着物を洗うと、邪見は一度それを広げてみた。元が元だからそれほど綺麗にはならないし、血の染みなどはそう簡単に落ちるものではないが、さっきよりはましだと思って絞りにかかる。
そこで、邪見はふと違和感を感じた。
少女の身体に対して、着物が小さすぎるような気がしたのだ。
再び着物を広げてあらためて見直してみると、袖や裾に継ぎが当たっている様子がない。繕った痕跡はそこかしこにあるが、それも拙(つたな)いもので、まるで子供の手によるようなものであった。
「……?」
いかに貧しくとも、普通は子供の成長に合わせて、着物を仕立て直したり、(貧しくてそれすらも出来ない場合であっても)袖や裾に布を継いだりするものだが、この着物にはそういった形跡が全くないのだ。もし仮に着物に布を継ぐ事すらも出来なかったのだとしても、綻びや何かを繕うのは親がする筈であるが、これはどう見ても大人の手によるものではない。
「……」
あの少女が自分たちの後を着いて来たのは、狼どもによって村人達――身寄りの者――が食い殺されてしまったためだと思っていたのだが、もしかしたらそのずっと前から彼女には身寄りの者などいなかったのではないだろうか。
辛うじて身を寄せていた村が狼どもによって壊滅させられ、天生牙によっていきなりこの世に引き戻された幼子が、命を救ってくれた相手の後を――それが妖怪であっても――思わず追ってしまったのは無理はないかもしれない。
そう考えると、思わず同情にも似た感情がわきあがるが、それを打ち消すようにぶんぶんと首を振る。
妖怪である自分が、人間の子供に同情する必要など無いのだ。
しかし、それなら何故主はあの少女を連れてきたのだろうか――と、改めて着物を絞りながらふと考え込んでしまう邪見であった。
りんは物珍しそうに白濁した湯をぱしゃぱしゃと撥ね上げていた。
昼間はともかく、夜になるとまだ冷え込む事のある時期であるため、(少し熱かったのだが)湯に浸かっているのは気持が良かった。渡された布で腕を擦ってみると、湯で温まって柔らかくなった肌から垢が糸くずのようによれてぽろぽろと落ちる。心なしか、それを落とした後の肌がより滑らかになっているような気がして、りんは身体のあちこちを布で擦ってみた。その度に垢がぽろぽろと落ちるのが面白くて、強く擦っていると、かえってひりひりしてきたので、適当な所で止める。
「……このくらい、落としたらいいよね」
ぽつりとそう呟いて、ふと気がついたように自分の喉に手をやってみる。
指先に触れる肌の感触は滑らかで、傷一つない。
身体のあちこちを改めて見直してみるが、元々あった古い傷跡などはともかくとして、直前まで負っていた打ち身や傷の痕跡は全く無かった。先程転んで打ち付けた膝や手のひらは少しひりひりとしたが、それほど気にはならなかった。
腕を伸ばしてみるが、青痣や打ち身の痕はどこにも見当たらない。
「……りん、死んだはずなんだよね……」
不意に――熱い湯に浸かっているにもかかわらず――冷たいものが背筋を伝いおりた。りんはぶるりと身体を震わせると、身体を丸めて顎まで湯に浸かりなおした。
視界いっぱいに広がった狼たちの真っ赤な口と鋭い牙。それがりんの覚えている最後の光景になるはずだったのだ。
何故自分が助かったのかという事は、今のりんにはまだ良く解ってはいなかったが、あの白銀の妖怪が関わっていることだけは漠然と察していた。
そういえば、邪見が何やら言っていたような覚えもある。
後で(殺生丸には訊いても無駄だろうから)邪見に訊いてみようと思いながら、りんは濡らした布で顔を拭うと、そろそろ上がろうと立ち上がりかけた。
だが――
(……あれ?)
頭の芯がぐらぐらするような奇妙な感覚がする。目の前が――湯気のせいだけでなく――真っ白になっていった。
温泉の中から聞こえてきた派手な水音に、阿吽は片方の首を上げた。
今、温泉の中には人間の子供が入っているはずである。
もう片方の首を擡げて邪見が向かった方を見やるが、まだ帰ってくる様子は無い。ふらりと別の方向へ行った主がこちらに来る気配もまだないことを確認すると、双頭竜はようやく立ち上がって温泉のほうに近づいていった。
邪見同様、彼らもまた主の行動に首を傾げていたのであるが、(まず間違いなく雑用の悉くを押し付けられるであろう)邪見とは違って、彼らはある意味呑気に構えていた。
殺生丸が何を考えて人間の子供などを連れてきたのかは分からないが、主がそうしたいのであれば彼らは黙って従うだけだった。――どの道、誰が何と言おうが、殺生丸は己のしたいようにしかしないのだから。
ひょい、と首を伸ばして天然の岩風呂を覗き込むと、阿吽は少し驚いたように四つの眼を瞬かせた。
人間の子供が、ぐったりとした様子で温泉の中に浮かんでいる。
阿吽は慌てて身を乗り出すと、二つの首を伸ばして子供の両腕を傷をつけないようにそっと咥えて湯の中から引き上げた。
柔らかな草の上に子供の身体を下ろすと、子供は小さく何度か咳き込んで少し水を吐き出した。
小さな痩せこけた身体が茹で上がったように真っ赤になっている。どうやら湯あたりしたらしい。
そこまでは分かるのだが、これからどうしたものだろうかと、阿吽は双の首を傾げた。
今は湯あたりで火照っていても、このままにしておいたら急激に体温が失われてしまうことくらいは彼らにも分かる。何らかの方法でそれを防がないと、今度はそのせいで身体が弱る事は間違いなかった。
しかし、自分たちの身体を覆うのは固く冷たい鱗であり、主のようなふかふかした毛皮ではないのだ。
主を呼びに行った方がいいだろうかと首を傾げていると、当の本人がやってくる気配がした。
少女の気配の変化を察して、殺生丸は下僕と騎竜を残しておいた場所に足を向けた。
湯あたりでもしたらしく、真っ赤になってぐったりしている少女の傍らに、騎竜が困惑したように佇んでいる。
下僕の姿はなかった。少女の着物やらが無いところから察するに、どうやら着物を洗いにでも行ったらしい。
片方の頭でぐったりとしている少女を見ながら、阿吽がもう片方の頭を上げて殺生丸の方を見つめてくる。
殺生丸もあらためて少女を見下ろしてみた。
湯で温められて赤くなった肌にいくつも浮かぶ傷痕に、僅かにその金色の眼が細められる。日常生活の中でつくような傷ではなく、明らかに他者による暴行の痕跡であると判るそれは、少女の小さな身体のあちこちを埋め尽くすように浮かび上がっていた。
「……」
殺生丸は無言のまま少女の傍らに腰を下ろし、己の毛皮の端が少女の身体を覆うようにしてやった。本能的なものなのか、少女が身体を丸めて毛皮の中により深く潜り込もうとしてくるのを意識の端に捉えながら、殺生丸はゆっくりと近づいてくる下僕の匂いを嗅ぎ取っていた。
人頭杖に少女の着物を括りつけ、空いた手に焚きつけにするつもりの粗朶を抱えた邪見が戻ってきた。主の様子を見て元より大きな眼を更に見開いたものの、特には何も言わずに――あるいはただ単に絶句していただけかもしれないが――慌てて焚き火の準備を始める。
「す、すぐに着物を乾かしますので……」
主の毛皮の端から少女の手足がはみ出ているのを見れば、状況は大体予想がついた。
大方、湯あたりででもしたため、体温の低下を防ぐためにやむを得ず毛皮で覆ってやっているのであろう。人間嫌いの――加えて、鼻の利く――主がそこまでするのは不可解極まりないのだが(そんな事をすれば、まず間違いなく人間の臭いが移るのだから)、あえてそこには思考を向けないようにしておく。
集めてきた粗朶に人頭杖で火をつけると、着物を乾かそうと大急ぎで広げるが、その動きが途中で止まった。
「……あ……」
着物の身ごろの部分が何箇所が大きく裂けている。
そういえば、絞った時に何やら妙な手ごたえを感じたような気がしたが……。
「…………」
背後の気配が何だか今まで感じたことがないくらい不穏さを増しているように感じられるのは、果たして自分の気のせいであるのだろうか。振り向いて、それを確認するだけの勇気は邪見にはなかった。
「……あ、あたらしい、物を、調達してまいります、ので……」
完全に裏返った声でそう言いながら、金縛りにでもあったかのように動こうとしない四肢を何とか動かして、この場から逃れようとした邪見であったが、次の瞬間にそれは別の形で叶えられる事となる。
すっかり馴染んだ――悲しいかな――主の強烈な蹴りが見事に脇腹に入って、彼の身体は夜空に綺麗な放物線を描いて飛んで行ったのであった。
……因みに、これが邪見がりん絡みでお星様になる羽目になった、記念すべき(?)第一回目の事となるのだが、この時はまだ誰もそれを知る由もなかったのである。
「……ふん」
下僕を蹴り飛ばした後、殺生丸は面白くも無さそうに小さく鼻を鳴らした。
END
2007.9.17 脱稿
-
2007/09/17 |
- お題 |
- Comment: 0 |
- Trackback: 0 | [Edit]
- ▲
へろへろ
こんばんは、ご無沙汰しておりました。管理人です。
最近、公私共に色々ありまして、軽くではありますがちょっと精神的にまずい状態だったため、引っ込んでおりました。
とりあえず私生活の方は一段落つきましたので、ちょっと一息ついてます。
…あと、近々ネウロが創作のカテゴリに入ると思います。(苦笑)
いや、どうも最近、ゴーストハントとかの調査関係の話が書きたくなっておりまして、その関連で(あれを推理物と言えるのかどうかはともかくとして)事件解決とかの話も書きたくなっているようです。
勿論、殺りんも書きたい話やネタは一杯ありますが、今は日常的恋愛物より、色気に欠けるものを書きたい方向に頭が向いているようです。
リハビリ代わりに、Wパロで遊んでたりしますけど…殺りんで、「PRIMA CLASSE HUGTRANG」のシーンを変換してみたり…(りんたん=ちゃあ。兄上=ヒュートランで(笑))
以下はお遊びで。
[へろへろ] Read More↓
最近、公私共に色々ありまして、軽くではありますがちょっと精神的にまずい状態だったため、引っ込んでおりました。
とりあえず私生活の方は一段落つきましたので、ちょっと一息ついてます。
…あと、近々ネウロが創作のカテゴリに入ると思います。(苦笑)
いや、どうも最近、ゴーストハントとかの調査関係の話が書きたくなっておりまして、その関連で(あれを推理物と言えるのかどうかはともかくとして)事件解決とかの話も書きたくなっているようです。
勿論、殺りんも書きたい話やネタは一杯ありますが、今は日常的恋愛物より、色気に欠けるものを書きたい方向に頭が向いているようです。
リハビリ代わりに、Wパロで遊んでたりしますけど…殺りんで、「PRIMA CLASSE HUGTRANG」のシーンを変換してみたり…(りんたん=ちゃあ。兄上=ヒュートランで(笑))
以下はお遊びで。
「え……ええと、本当にあの乱戦の中に突っ込むんですかー!?」
「今が狙い目だ。3カ国以上の騎士団や傭兵隊で混戦状態になっているから、弱い奴もまぎれている可能性が高い」
「ほ、本当に…?」(半泣き)
「私とこの“天生牙”を信じろ。…確実にマスターが星を取れるように、探知機をフル稼働させているところだ」
「ほ、ほんとですね……?」
(以下はりんたんには聞こえないように小声での呟き)
「……ふん、どれもこれも雑魚か……2、30騎食ったところで何の足しにもならんな」
「な、何か言った? 殺生丸さま?」
「いや、何も。……一番弱そうで、動きの鈍いMH発見! 乱戦を利用して、コンシールモードで一気に間合いに入る!」
「え? ど、どのMH? ……な、なんかむちゃくちゃ強そうに見えるんだけどーっ!?」
「気のせいだ(きっぱり)。コントロールを渡すぞ」
「本当に大丈夫なんですかぁーっ!?」
※りんたんは騎士としては最弱クラスで、普通だと工場出身のファティマからも見向きもされないのですが、何の因果かとんでもない優秀ファティマである兄上に「マスター」として見込まれちゃった、と。
※騎士であるりんたんがファティマの兄に「さま」つけなのは、りんたんはずっと一般の兵士よりちょっとまし、な程度の位置にいたため、一般の兵士同様、ファティマを「さま」つけで呼ぶ習慣が抜けないためです。
なぜ兄がりんたんを選んだのかは、元ネタのちゃあとヒュートランの関係と同じで「自身の能力をさらに上げるためには、最弱クラスの騎士をパートナーにして、強い騎士と戦うのが最適だから」という理由だったりします。(笑)
戦闘中のひとコマとしては。
「……私の想像以上にすごいな……りん……」
整った顔を奇妙な具合に歪めながらぽつりと呟く。
「……こ、ここまで弱いとは思わなかった……!」
そうぼやきつつも、両手は驚異的なスピードでコントロールパネルを操作し、毎秒36兆5千億回の予測演算から導き出される回避・攻撃プログラムをMHに流し込んでいる。
「この私の能力をここまでレッドゾーンにぶちこみっぱなしで……おまけに、こいつのパワーで「ぺちっ」…だと……?」
ふふふ、と不気味な笑いが形のいい唇から洩れる。
「………私の大脳がオーバーヒートして失神する前に、片をつけないとな……」
といった感じで。
りんたんファティマヴァージョンですと、「ファティマを選ぶ」というとんでもないプログラムを施されたMHを父上の遺産として渡された兄が、はぐれていたりんたんを拾って、といった所で。
いままでどんな高名なマイトの作品にも反応を示さなかったのだから、一応銘入り(マイト自らが育てたファティマ)とはいえ、りんたんには無理だろうと思ったら……と言った感じで。
ファティマルームに入ったりんはごくりと唾を飲み込んだ。
シートに座り、各種計器の位置の確認をする。通常の動作手順を行えば、普通のMHなら容易く起動させる事は出来るが、この“天生牙”だけはそうは行かないのだ。
「…“天生牙”…」
ぽつりとMHに呼びかける。
「私たちもあなたたちも、単独では存在する意味が無いモノ。
騎士様の傍らにあるときにだけ、存在を許されるモノ。
あなたがどんなに強いMHであっても、殺生丸さまとともに戦うことをしないのであれば、あなたはただの金属の塊に過ぎない…」
言葉が途切れると耳が痛いほどの沈黙がその場を満たす。
「それは私たちも同じ。
どんなにスペックが高くても、主を持たない私たちはただの“物”に過ぎない。
私たちの存在意義は唯一つ。
『騎士の傍らにあり、全力でそのサポートをすること』
それを行うからこそ、私たちは存在する事を許される……
あなたも同じでしょう? あなたはあの方のために作られ、ずっとあの方の側にいた。
あの方のために戦うこと。…それが、あなたの存在意義のはず」
りんは再び言葉を切り、大きく息を吸い込んだ。
「――なら、私を選んで。
あの方を支えるパートナーとして在るために、私を選んで」
殺生丸は無言でMHを見上げていた。
りんがファティマルームに入ってから、すでに10分以上経過している。
かの名高い“黒騎士”(バッシュ・ザ・ブラックナイト)と“エスト”のように最初から対になるように作られたものならともかく、後付で『ファティマを選ぶ』などというふざけたプログラムを組み込まれている特殊なMHであるがゆえに、これは今までその真価を発揮する機会を持ちえなかったのだ。
「……あのファティマに出来ますかね?」
傍らに立つ従者の邪見がおずおずと問いかけてくる。
「……さあな」
常と変わらない感情のこもらない声でそう告げると、微かにその金色の眼を細める。
10分経ってもMHは沈黙したまま、起動する気配は無い。
そろそろ頃合かと思い、りんに下りてくるように告げようとした瞬間、ドーリー内に独特のエンジン音が響き渡った。
「!!」
「せ、殺生丸さま! “天生牙”が!」
邪見がそう叫ぶと同時に、殺生丸は床を蹴り、MHの頭頂部のファティマコックピットへ跳躍していた。
ファティマルームの中、りんはシートに座ってMHとの同調を行っていた。
今まで、どんな高名なマイトの銘入りのファティマでも行えなかった事を。
「…殺生丸さま」
りんがにっこりと殺生丸の方を向く。その彼女に殺生丸は鋭い目を向けた。
“天生牙”はこのファティマを選んだと言うのか。
今までどんな高名なマイトの作品が為しえなかったことを、この平均的なスペックしか持たないファティマが成し遂げたと言うのか。
「…私のパートナーになると言う事は、騎士の呪われた宿命を共に背負うと言う事だ」
「……」
「戦における勝利と栄光。名誉と名声。絶望と恐怖、血と狂気。
……その全てを私と共に負う覚悟はあるのか」
りんは真っ直ぐに殺生丸の目を見上げた。
「私たちはその為に作られたモノです。
私たちの全ては騎士様のために存在するのですから」
その答えに、殺生丸の唇が面白そうに吊り上がった。
ゆっくりとその手が伸ばされ、人差し指がりんのヘッドクリスタルに当てられる。
「You are my partner」
「――Yes.my load」
…単に兄を「マスター」と呼ぶりんたんが見てみたくて考えたネタです。(笑)
「今が狙い目だ。3カ国以上の騎士団や傭兵隊で混戦状態になっているから、弱い奴もまぎれている可能性が高い」
「ほ、本当に…?」(半泣き)
「私とこの“天生牙”を信じろ。…確実にマスターが星を取れるように、探知機をフル稼働させているところだ」
「ほ、ほんとですね……?」
(以下はりんたんには聞こえないように小声での呟き)
「……ふん、どれもこれも雑魚か……2、30騎食ったところで何の足しにもならんな」
「な、何か言った? 殺生丸さま?」
「いや、何も。……一番弱そうで、動きの鈍いMH発見! 乱戦を利用して、コンシールモードで一気に間合いに入る!」
「え? ど、どのMH? ……な、なんかむちゃくちゃ強そうに見えるんだけどーっ!?」
「気のせいだ(きっぱり)。コントロールを渡すぞ」
「本当に大丈夫なんですかぁーっ!?」
※りんたんは騎士としては最弱クラスで、普通だと工場出身のファティマからも見向きもされないのですが、何の因果かとんでもない優秀ファティマである兄上に「マスター」として見込まれちゃった、と。
※騎士であるりんたんがファティマの兄に「さま」つけなのは、りんたんはずっと一般の兵士よりちょっとまし、な程度の位置にいたため、一般の兵士同様、ファティマを「さま」つけで呼ぶ習慣が抜けないためです。
なぜ兄がりんたんを選んだのかは、元ネタのちゃあとヒュートランの関係と同じで「自身の能力をさらに上げるためには、最弱クラスの騎士をパートナーにして、強い騎士と戦うのが最適だから」という理由だったりします。(笑)
戦闘中のひとコマとしては。
「……私の想像以上にすごいな……りん……」
整った顔を奇妙な具合に歪めながらぽつりと呟く。
「……こ、ここまで弱いとは思わなかった……!」
そうぼやきつつも、両手は驚異的なスピードでコントロールパネルを操作し、毎秒36兆5千億回の予測演算から導き出される回避・攻撃プログラムをMHに流し込んでいる。
「この私の能力をここまでレッドゾーンにぶちこみっぱなしで……おまけに、こいつのパワーで「ぺちっ」…だと……?」
ふふふ、と不気味な笑いが形のいい唇から洩れる。
「………私の大脳がオーバーヒートして失神する前に、片をつけないとな……」
といった感じで。
りんたんファティマヴァージョンですと、「ファティマを選ぶ」というとんでもないプログラムを施されたMHを父上の遺産として渡された兄が、はぐれていたりんたんを拾って、といった所で。
いままでどんな高名なマイトの作品にも反応を示さなかったのだから、一応銘入り(マイト自らが育てたファティマ)とはいえ、りんたんには無理だろうと思ったら……と言った感じで。
ファティマルームに入ったりんはごくりと唾を飲み込んだ。
シートに座り、各種計器の位置の確認をする。通常の動作手順を行えば、普通のMHなら容易く起動させる事は出来るが、この“天生牙”だけはそうは行かないのだ。
「…“天生牙”…」
ぽつりとMHに呼びかける。
「私たちもあなたたちも、単独では存在する意味が無いモノ。
騎士様の傍らにあるときにだけ、存在を許されるモノ。
あなたがどんなに強いMHであっても、殺生丸さまとともに戦うことをしないのであれば、あなたはただの金属の塊に過ぎない…」
言葉が途切れると耳が痛いほどの沈黙がその場を満たす。
「それは私たちも同じ。
どんなにスペックが高くても、主を持たない私たちはただの“物”に過ぎない。
私たちの存在意義は唯一つ。
『騎士の傍らにあり、全力でそのサポートをすること』
それを行うからこそ、私たちは存在する事を許される……
あなたも同じでしょう? あなたはあの方のために作られ、ずっとあの方の側にいた。
あの方のために戦うこと。…それが、あなたの存在意義のはず」
りんは再び言葉を切り、大きく息を吸い込んだ。
「――なら、私を選んで。
あの方を支えるパートナーとして在るために、私を選んで」
殺生丸は無言でMHを見上げていた。
りんがファティマルームに入ってから、すでに10分以上経過している。
かの名高い“黒騎士”(バッシュ・ザ・ブラックナイト)と“エスト”のように最初から対になるように作られたものならともかく、後付で『ファティマを選ぶ』などというふざけたプログラムを組み込まれている特殊なMHであるがゆえに、これは今までその真価を発揮する機会を持ちえなかったのだ。
「……あのファティマに出来ますかね?」
傍らに立つ従者の邪見がおずおずと問いかけてくる。
「……さあな」
常と変わらない感情のこもらない声でそう告げると、微かにその金色の眼を細める。
10分経ってもMHは沈黙したまま、起動する気配は無い。
そろそろ頃合かと思い、りんに下りてくるように告げようとした瞬間、ドーリー内に独特のエンジン音が響き渡った。
「!!」
「せ、殺生丸さま! “天生牙”が!」
邪見がそう叫ぶと同時に、殺生丸は床を蹴り、MHの頭頂部のファティマコックピットへ跳躍していた。
ファティマルームの中、りんはシートに座ってMHとの同調を行っていた。
今まで、どんな高名なマイトの銘入りのファティマでも行えなかった事を。
「…殺生丸さま」
りんがにっこりと殺生丸の方を向く。その彼女に殺生丸は鋭い目を向けた。
“天生牙”はこのファティマを選んだと言うのか。
今までどんな高名なマイトの作品が為しえなかったことを、この平均的なスペックしか持たないファティマが成し遂げたと言うのか。
「…私のパートナーになると言う事は、騎士の呪われた宿命を共に背負うと言う事だ」
「……」
「戦における勝利と栄光。名誉と名声。絶望と恐怖、血と狂気。
……その全てを私と共に負う覚悟はあるのか」
りんは真っ直ぐに殺生丸の目を見上げた。
「私たちはその為に作られたモノです。
私たちの全ては騎士様のために存在するのですから」
その答えに、殺生丸の唇が面白そうに吊り上がった。
ゆっくりとその手が伸ばされ、人差し指がりんのヘッドクリスタルに当てられる。
「You are my partner」
「――Yes.my load」
…単に兄を「マスター」と呼ぶりんたんが見てみたくて考えたネタです。(笑)
-
2007/09/17 |
- 雑記 |
- Comment: 0 |
- Trackback: 0 | [Edit]
- ▲
生存報告
こんばんは、管理人です。
昨日は休みを取ってたので、旅行記でも上げようかと思ってたのですが、ここの所継続してる不眠症のため、どうも集中できずに結局寝てました。(苦笑)
まあ、本を読みながらうとうとできたので、多少ましになってきてるのかな?(^^;A ←症状が進んでるときに本を読むと、本気で寝られなくなる奴。
せっかくなので、不眠症ネタでも書こうかと、ちまちまメモしてます。
(←貧乏性)
……迂闊な事を書くと自分で自分の首を絞めそうなので、取りあえず、はっきりしてるのは、殺りんは調香師ネタで書くこと、くらいかな?
以下は旅行記。おかぼうさん、二日間おつきあいありがとうございましたv
[生存報告] Read More↓
昨日は休みを取ってたので、旅行記でも上げようかと思ってたのですが、ここの所継続してる不眠症のため、どうも集中できずに結局寝てました。(苦笑)
まあ、本を読みながらうとうとできたので、多少ましになってきてるのかな?(^^;A ←症状が進んでるときに本を読むと、本気で寝られなくなる奴。
せっかくなので、不眠症ネタでも書こうかと、ちまちまメモしてます。
(←貧乏性)
……迂闊な事を書くと自分で自分の首を絞めそうなので、取りあえず、はっきりしてるのは、殺りんは調香師ネタで書くこと、くらいかな?
以下は旅行記。おかぼうさん、二日間おつきあいありがとうございましたv
1日目。
今回はイベント自体が一日しかないので、前日はのんびりショッピングをしようと早めに待ち合わせ。
難波にていつものようにオタショップ巡り。今回は何故か犬の同人誌が一部の店舗で充実してました。
で、管理人はといいますと、ネウロ本をこそこそ漁ってました(苦笑)
書店委託などをしてる所は大抵大手なので(つまりイベント当日だと「壁」になるところ)先に買って置いた方がいいかなーと。
で、古本も含めて結構ゲットv
お昼はトルコ料理店で。ランチメニューが無かったので、単品を組み合わせて頼んだので、ちょっとお高かったですが、美味しかったので満足ですv お店の前でトルコアイスと鶏肉のケバブを屋台みたいな感じで販売してたので、ちょっと味見してみたいな、と言う方はどうぞv
時間に余裕があったので、ホテルに早めに入り、ご飯を食べに行きました。
グラスの一件は、テーブルの端においてあった空のグラスに、(追加注文をしようと思って)広げたメニューが当たって、床に落ちてしまったんですよね。(ある意味事故)
…誰でもうっかりやりかねない事ですので、皆さんも飲みに行く際にはお気をつけて。
2日目。
今回は世界陸上もあるため、会場から2駅ほど歩いてくれと事前に指示がありましたが、条件反射なのか、ついついニュートラムの駅に向かう人が結構いました。
今回は一日だけのせいか、着いたのは9時くらいでしたが、早くも中庭に第一陣が出された後でした。
パンフレットを見ながら「犬サークル少ないね…」と呟き、行く順番をお互いに確認。
幸い、中庭に出された時も、何とか陰になる所にいられたので、少しはましでした。
11時頃に入場して、まずは犬スペースへ行って新刊ゲット。その後は別行動で、管理人はゴーストハントへ。
今回、ゴーストハントはのきなみ壁に配置されていて、行きやすかったけど、なんだか驚きました。(アニメ効果かな? …それほど数は無かったんだけど)
で、その後はネウロに。目星をつけておいたサークルさんの本日合わせの新刊と、本屋に置いてなかった既刊などを購入。壁側のほうが終わってから、メインスペースへ。ちょこちょこ買いあさってました。
寂しかったのは、原作が漫画でまだ「若い」ジャンルにはありがちなことなんですけど、小説本が少なかったことですか。
かなり抑えて買い物したんですけど、前日からの分を合わせると結構な数を買ってしまいました…(遠い目)
その後はおかぼうさんと合流してグッズスペースへ。ブックカバーを購入。
グッズスペースは見てるだけでも結構楽しいですね。色々あるので。
今回はかなり時間に余裕を持って行動できたので、あちこちうろうろ出来ました。
おかぼうさん、お付き合いありがとうございました。m(_ _)m
今回はイベント自体が一日しかないので、前日はのんびりショッピングをしようと早めに待ち合わせ。
難波にていつものようにオタショップ巡り。今回は何故か犬の同人誌が一部の店舗で充実してました。
で、管理人はといいますと、ネウロ本をこそこそ漁ってました(苦笑)
書店委託などをしてる所は大抵大手なので(つまりイベント当日だと「壁」になるところ)先に買って置いた方がいいかなーと。
で、古本も含めて結構ゲットv
お昼はトルコ料理店で。ランチメニューが無かったので、単品を組み合わせて頼んだので、ちょっとお高かったですが、美味しかったので満足ですv お店の前でトルコアイスと鶏肉のケバブを屋台みたいな感じで販売してたので、ちょっと味見してみたいな、と言う方はどうぞv
時間に余裕があったので、ホテルに早めに入り、ご飯を食べに行きました。
グラスの一件は、テーブルの端においてあった空のグラスに、(追加注文をしようと思って)広げたメニューが当たって、床に落ちてしまったんですよね。(ある意味事故)
…誰でもうっかりやりかねない事ですので、皆さんも飲みに行く際にはお気をつけて。
2日目。
今回は世界陸上もあるため、会場から2駅ほど歩いてくれと事前に指示がありましたが、条件反射なのか、ついついニュートラムの駅に向かう人が結構いました。
今回は一日だけのせいか、着いたのは9時くらいでしたが、早くも中庭に第一陣が出された後でした。
パンフレットを見ながら「犬サークル少ないね…」と呟き、行く順番をお互いに確認。
幸い、中庭に出された時も、何とか陰になる所にいられたので、少しはましでした。
11時頃に入場して、まずは犬スペースへ行って新刊ゲット。その後は別行動で、管理人はゴーストハントへ。
今回、ゴーストハントはのきなみ壁に配置されていて、行きやすかったけど、なんだか驚きました。(アニメ効果かな? …それほど数は無かったんだけど)
で、その後はネウロに。目星をつけておいたサークルさんの本日合わせの新刊と、本屋に置いてなかった既刊などを購入。壁側のほうが終わってから、メインスペースへ。ちょこちょこ買いあさってました。
寂しかったのは、原作が漫画でまだ「若い」ジャンルにはありがちなことなんですけど、小説本が少なかったことですか。
かなり抑えて買い物したんですけど、前日からの分を合わせると結構な数を買ってしまいました…(遠い目)
その後はおかぼうさんと合流してグッズスペースへ。ブックカバーを購入。
グッズスペースは見てるだけでも結構楽しいですね。色々あるので。
今回はかなり時間に余裕を持って行動できたので、あちこちうろうろ出来ました。
おかぼうさん、お付き合いありがとうございました。m(_ _)m
-
2007/09/04 |
- 雑記 |
- Comment: 0 |
- Trackback: 0 | [Edit]
- ▲
行って来ます
こんばんは、不眠症気味の管理人です。
…昨日(というか今朝方)眠れずにぼーっと本を読んでいて、はたと「…あ、これ、前にやったやつ(不眠症初期症状)だわ…」と気づきました。
………かれこれ一週間近くなってから気づくなよ…自分。
まあ、それはさておき、日付が変わったので、今日から大阪に行くため、土曜はネット落ちします。多分日曜の夜には出てくると思います。
どうも雨が降りそうなので、いまいちなのですが、かんかん照りよりはいいかな、とも思いなおしてます。
今回は犬のほかにいつものゴーストハントと、あと………ネウロもちょっと回ろうかなーと思ってます。(苦笑)
きちんとタイムテーブルを決めて回らないとな…
例によって例のごとく(?)おかぼうさんとご一緒しますので、午後には犬スペースの辺りにいるかもしれません。見かけたら、声をかけてみてください。
それでは、準備があるので、お風呂に入って寝るとします。
…昨日(というか今朝方)眠れずにぼーっと本を読んでいて、はたと「…あ、これ、前にやったやつ(不眠症初期症状)だわ…」と気づきました。
………かれこれ一週間近くなってから気づくなよ…自分。
まあ、それはさておき、日付が変わったので、今日から大阪に行くため、土曜はネット落ちします。多分日曜の夜には出てくると思います。
どうも雨が降りそうなので、いまいちなのですが、かんかん照りよりはいいかな、とも思いなおしてます。
今回は犬のほかにいつものゴーストハントと、あと………ネウロもちょっと回ろうかなーと思ってます。(苦笑)
きちんとタイムテーブルを決めて回らないとな…
例によって例のごとく(?)おかぼうさんとご一緒しますので、午後には犬スペースの辺りにいるかもしれません。見かけたら、声をかけてみてください。
それでは、準備があるので、お風呂に入って寝るとします。
-
2007/09/01 |
- 雑記 |
- Comment: 0 |
- Trackback: 0 | [Edit]
- ▲







